明日に架ける橋はグラミー賞の6部門を受賞し、華々しい栄光を手にしました。と同時に、これでポールサイモンとアートガーファンクルは別々の道を歩みます。グラミー賞の審査においては、確か当時は12人の審査員のうち、6人が明日に架ける橋、5人がビートルズのレットイットビー、一人が棄権だったと思います。本当に僅差で明日に架ける橋が受賞しました。
明日に架ける橋のヒントになった曲として、ポールサイモンはスワン・シルバートーンズ版『Mary Don't You Weep』を挙げています。1960年代のアメリカにおいて、若者を中心とした公民権運動がありますが、そこでさかんに歌われていた黒人霊歌の一つです。
前半部は省略して、
|
Aaaa-aah Mary! (Oh Mary, don’t you weep)
Wish I had somebody to help me call “Mary!” (Oh Mary, don’t you weep)
I’ll be your bridge over deep water if you trust in my name Mary (Oh Mary, don’t you weep)
Oh, I’ll be your rock in a weary land (Oh Mary, don’t you weep)
「聖母マリアを信じるならば、私があなたの深い河に架けるはしになってあげよう」。ゴスペル風な曲をポップ調に創り変えていますが、荘厳な電子ピアノを基調とした格調高いアレンジになっています。
で、最初はシングルのモノラル盤でしたが、日本でも日本コロンビアのシングル盤なので、モノラル盤です。当時はラジオで聞くことが普通で、テレビで見ることはまったくといってなかった時代です。日本でもラジオで、海外のトップチャートを紹介している番組で聞く程度だったので、5分もの長い曲だとは知りませんでした。その後、FMなどで1曲すべてを聞くことができましたが、まだそのころはAMで聞くのがやっとのころでした。
アルバムを手に入れるころはCBSソニーになっていたと思います。アメリカではアルバム盤でもモノラルとステレオ盤がありましたが、日本でははじめからステレオ版でした。以降、シングル盤もほとんどすべてがアルバムからのカッティングで、ステレオ版になっていました。でもアメリカではシンブルカット用で、モノラル盤が中心でした。それはその後のボクサーやセシリアでもそうでした。なので、日本ではシングルカット版のアレンジが分からず、なんとか手に入れようとしていましたが、それは社会人になって海外出張するまで、待つことになりました。
この明日に架ける橋もラジオでは前半部までしか聞けませんでしたが、レコードで最後まで聞くことができたとき、その音の迫力やボーカルの力強さには本当に驚きました。ステレオだけでも素晴らしいエンディングなのに、SQ版の「明日に架ける橋、アルバム盤」を聞いたときの驚きと感激はすばらしいものでした。一番の曲は「ボクサー」で次が「明日に架ける橋」でしたかね。SQ版の印象が強すぎて、引っ越しのたびにSQ用の場をどう設定するか、いつも悩んでいました。そして今では、再現できない住まいになっています。それでも簡単に、手軽に再現できないかを考えに考え、イヤホンジャックを二股のイヤホンジャックにつなげ、一つはフロント用、一つはリア用にし、フロント用はイナーイヤホンで耳の穴に入れ、リア用は耳を覆うタイプのヘッドフォンで、なんとか4チャンネル対応の再現を試みています。
これも今では物が多すぎて行方不明になっていますが、いつか、見つけて再現させるか、いま、このコラムを書きながら、もう一度、作り直そうとしてアマゾンに部品だけは注文した次第です。